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この連載は、当法人のメーン事業である「聞こえの相談会」をめぐる、さまざまな問題について、会報「UNIVERSAL」第9号から連載したものである。ここに、その一部を再録する。

2001年10月5日発行 第9号

「聞こえの相談会」考1

深刻な「聞こえ」の情報不足

まだデータはまとめてはいないが、『聞こえの相談会』を続けてきて、気づいたことがたくさんある。その一部を、中間報告のかたちで書いてみたい。

相談会はこの6月末までの時点で、箕面市1回(3日間)、豊中市3回,池田市1回、堺市1回、岸和田市2回、高石市1回の計9回おこない、271人の方が相談にみえられた。

大半は高齢者で、70歳以上のお年寄りが多かった。そして、聞こえの程度は障害には至らないものの、日常生活に不自由する30〜60デシベルぐらいの人が目立った。

ここでは、障害にまでは至らない、少し一般的な高齢者の相談から、二つのことを考えてみたい。

30〜60デシベルぐらいで相談に訪れる高齢者の大半は、これまで耳鼻科(病院)の診察を受けたことがなく、補聴器店をのぞいたこともないという老人が多かった。

長い間、健聴できたものだから、自分の聞こえの衰えに戸惑っている。

「自分の聞こえはどの程度悪いのか」「病院に行く必要があるのか」「病院に行ってもなおるのか」「もう仕方ないことなのか」「補聴器店というのは飛び込みでも受け付けてくれるのか」「補聴器というのはどの程度聞こえるものなのか」「テレビを聞こえるようにしたいが、どこで面倒を見てくれるのか」「電話をよく聞きたいが、なにか方法はあるのだろうか?」等々、わからないことだらけなのである。

そして、一般の人の行動半径内には、こういう相談にのってくれるところは、まずないと考えたほうがよい。要するに、耳と聞こえに関する予備知識はゼロに等しいのである。

こういう人は相談にみえても、まず、どういうことに困っているか、延々とお話になる。こちらは聞きながら相槌をうつ。そしてこちらの体験をお話したり、知っている事例をお話しているうち、少しずつ、自分の聞こえの状態がわかってくるというかたちになる。

だから、私たちにできることは、以下の3つのことである。

@まず、相手の話を良く聴く。そして、理解してあげる。共感してあげる。このことで、相手の心がひらかれる。

A次に、その人の聞こえの状態を知ってもらうため、こちらの体験やら、知っている事例やらをお話しする。聴力測定にあたっては、聴力損失レベルについてもわかりやすく、一般的なかたちで、基本的なことを説明してあげる。

B もし、補聴器を支援する機器(補聴器など)を希望する場合には、その人に役立つかどうか、いろいろと実際に試してもらい、その人に合うものがあれば(慎重にフィティングのうえ)提供する。

だから、1回の相談会では、@とAで時間がとられ、Bの時間がやや足りないのが現状である。(その後、補聴器の装用、調整には何回も相談にきていただき、時間をかけて調整することになった)

次に、病院に通っている人たちの相談の問題がある。耳のどこかに病気があり、その治療に通っているわけだが、なぜ相談会にみえたか、といえば、病院では聞こえの問題は解決しないからである。

どういうことを言われてきたか、というと、「突発性難聴ですなあ」「トシだから聞こえにくくなるのは仕方ないですねえ」「これは補聴器をかけてもダメでしょう」とか。補聴器を紹介してもらった人でも、「かけても聞こえない」「合わないんじゃないか」という人が多かった。

つまり、病気そのものについては治療してくれるが、それにともなう聞こえの悪さについては、あまり親身に相談にはのってもらえなかったらしい。

医者は病気を治療するのが仕事だから、これはある程度、やむをえない。聞こえの問題には医者の仕事の範囲をはみだす部分がある。

私が倒れたころは耳鼻科で難聴問題、聞こえの問題に詳しい先生は大学病院の一部を除けばほとんどいなかった。いまは治療技術も進み、開業医にも補聴器外来をもっているところもあり、難聴に関心をもつ耳鼻科医が増えてはいる。しかし、全体としては、まだごく一部でしかない。

聞こえの相談会の問題は、医学や補聴器の問題だけではなく、コミュニケーションの問題であり、その人の性格、生活環境、行動パターンなどを含めた心理の問題でもある。

本来は関係の専門家が一同に集まり、多用な面からの相談にのってもらえれば、現状での最善の対策も可能だが、日本にはまだそういうシステムがない。

無力感を感じながらの相談会であるが、それにもかかわらず、たいへん感謝される。いかに、「行き場」のない人たちが多いかを物語っている。

   
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