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2002年4月2日発行 第11号

「聞こえの相談会」考3

お医者さん、もう少し配慮を

昨年秋からことしはじめにかけ、当法人の事業は「聞こえの相談会」ほぼ1本に集中し、私たちはその対応に追いまくられた。堺市、和泉市など泉州での相談会が中心で、この3月から、やっと原点の箕面市に戻ってきた。

対象を高齢者にしぼっているわけではないが、相談に訪れる人の大半はやはり高齢者である。高齢者をめぐる問題について、いろいろ考えさせられた。前回は、高齢者と家族との関係について触れたが、今回は聞こえの問題で悩む高齢者に対する医師の対応について触れてみたい。

耳のどこが悪いというのではなく、聞こえが悪いのを苦に耳鼻科を訪れた高齢者の場合、「あなた、トシだから、聞こえが悪くなるのは当たり前だよ。仕方がないことです」とお医者さんから突き返されるケースが多い。

そういわれると、何せ医者の言うことだから、「仕方がないのかなあ」としばらくはあきらめているが、高齢者として、毎日の日常生活があるわけだから、聞こえの悪さは不便で仕方がない。「トシだから仕方がない」ではすまないのである。こうして、私たちの相談にやってくる。

私たちはまず、そうした愚痴を聞くのが第一の仕事で、実際、補聴器の効果のない高齢者も多いし、効果にかかわりなく、購入するゆとりのないご老人もおられる。

しかし、なかには、補聴器がうまく合い、「聞こえが大分よろしい」と喜んでくださっている方もいる。装用・調整・調整に時間がかかり、効果も充分と言えない場合もあるが、少なくても「仕方がない」と切り捨てられるより、どれだけマシか知れない。

また、日常生活の会話を補聴器で充分に聞き取ることができなくても、家でテレビを聞くのに役立つ方法を紹介できたこともある。

それに、たとえ機器が役立たなくても、お話を聞き、家のなかでの会話の仕方、聞き取りにくい場面についての知識、そうしたものをお伝えするだけで、喜んでもらえたこともある。

まったくどうにもならない、あきらめるしかない、突き返されるのは「死ね」と言われるのと同じなように思うのだが、補聴器の適合検査については保険適用になったものの、大方の耳鼻科のお医者さんは「面倒なことはかんにんしてほしい」と思っているのではないか。

「聞こえ」は耳だけの問題ではない。同じ言うにしても、言い方が大切になってくる。権威を独占し、影響力の大きいお医者さんには、言葉が聞こえることの大切さ、言葉を聞くことの大切さをかみしめたうえでのアドバイスを期待したいものである。

こういうケースも結構多い。ご本人は聞こえが悪いので病院を訪れたものの、医師にそう言われると、「そういうものか」と思って、放置しておく。しかし、こちらも現実の生活に困ることが多いので、相談会にやってくる。

だいたい、40デシベル前後の人が多いものの、なかには50デシベル以上の人もいる。

確かにこの程度の聴力の人であれば、静かな診察室でなら、補聴器を使わずに、医師の話を聞くことができる。しかし、現実の世の中は、病院の診察室ではないのである。とりわけ、都市はどこもかしこも騒音に取り囲まれている。静かな場所はどこにもないのだ。このレベルで「十二分に生活に不自由する」のである。

聞こえに関して無関心なお医者さんが多い。お医者さんの守備範囲を超える部分なのだが、日本ではオージオロジストのようなものがなく、言語聴覚士もまだ十分に育っていない。だから、この部分は日本では「空白」になっているのだが、すべてお医者さんの領域であるかのような誤解があるため、たいへん困ったことになっている。

「聞こえとうるささ指標」、それに「障害の程度」といった、日本の矛盾だらけの指標、基準も大きなマイナス要素になっている。障害にしても、両耳70デシベル以上で、軽い障害の6級に位置づけられている。

が、両耳70デシベル以上なら、いまの社会の職場ではほとんど働けない。役に立たない状態である。こういう間違った基準づくりの余波が、障害にまで至らない難聴に対する認識、対応にまで影響しているように思う。

相談を受けていて、無性にハラが立ってくる。

聞こえの問題をめぐるリハビリテーションのシステムがやはり必要である。そして、旗振り役には理解あるお医者さんの存在が欠かせない。現状で必要なことは、こうした現実を踏まえ、お医者さんと外部との、ゆるやかな協力体制の確立ではあるまいか。

   
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